不動産購入時、団体信用生命保険と火災保険だけで安心は禁物!地震保険も必要なワケ

不動産を購入し、住宅ローンを借り入れる際には「団体信用生命保険(団信)」の加入が条件ですが、「火災保険」の加入も大前提になります。前者は、債務者が死亡したり高度障害に陥ったりした場合、ローン残債と同額の保険金がおりて返済が免除されるもの。後者は、建物か家財が火災の被害に遭った場合に補償が受けられるものです。

の2つに入っていれば安心......と思いきや、ファイナンシャルプランナーの清水香さんによれば、優先順位が低くなりがちな「地震保険」も欠かせない、といいます。その理由を聞きました。

●住まいのリスクは基本的に「自己責任」!

「マイホーム購入時には火災保険と地震保険をセットで考えるべきです。なぜかというと、『私有財産は自助が基本』になるからです。住まいが火災に遭っても公的な補償は一切ありません。そのため、火災保険への加入が必須なのです。さらに、より大規模な地震や津波、風水害でも公的な支援は十分ではありません。もし地震で住んでいる建物が全壊または大規模半壊すると、『被災者生活再建支援法』によって国から支援金が受けられます。しかし、それは最大で300万円。建て替えや修繕に十分な支援とはいえません。つまり、住まいのリスクは基本的に自己責任になるのです」(清水さん 以下同)

地震への備えが必須! だけど、火災保険に加えて地震保険は負担が大きくなってしまうのでは? 住宅ローンの返済に教育費や介護、老後資金の準備......これ以上の負担は厳しい、と考える方も多いでしょう。

「地震保険は、実は政府も保険金の支払い義務を負っている補償制度なんです。公的なものですから、どこの保険会社、代理店で加入しても保険料は同じです。『お高いんでしょう?』という方もいらっしゃいますが、保険料がもっとも高い東京都内の古い木造住宅であっても保険金額1,000万円で年間36,000円程度。月々の支払いに換算すると3,000円程度で、それほどの負担にはなりません」

●右肩上がりの地震保険料はリスクの高まりを示唆

さらに、清水さんが提案するのは「火災保険を見直して地震保険にも加入する」というプラン。もともと地震保険は単体では契約できず、火災保険とセットで契約する仕組み。火災保険の補償内容を精査する際、合わせて再考しやすいのです。

火災保険は火災だけではなく、さまざまな補償を盛り込んだパッケージ型が主流。火災や破裂、爆発、風災、落雷などを補償するシンプルなものから、水災、騒擾、盗難、そして水濡れや破損・汚損までカバーする手厚いものまであります。

「火災保険は、住宅ローンを借りる際に勧められるままに加入した方も多いのではないでしょうか。当たり前ですが、補償が厚いほど保険料は高くなります。子どもが窓ガラスを割ったりテレビを壊したりといった破損・汚損で保険金がもらえるのはうれしいかもしれませんが、それって本当に『必要』なの? と考えてみることは大事です。火災保険の補償内容を見直し、本当に必要な内容だけに絞れば、保険料ダウンにもつながります。その分、地震保険で火災保険が補償してくれない範囲をカバーしましょう。そもそも、地震が原因の火事は火災保険の対象外。世界有数の地震国に住む私たちは十分に備えておくべきでしょう」

2017年1月から地震保険の料率が改定されました。地震保険料は住んでいる地域、建物の構造によっても異なりますが、全国平均で5.1%ほど引き上げられています。この算定は被害予測のシミュレーションがベース。当然ながら、値上がりは地震による被災リスクの高まりを示すもので、私たちに危険が迫っていることを示すシグナルだと言えるでしょう。

「この改定では、これまで3段階だった損害区分が全損、大半損、小半損、一部損と4段階にきめ細かくなりました。受け取れる金額は、全壊なら保険金額の100%、一部損なら5%と、段階によって変わります。

このように区分されているのは損害状況を速やかに把握し、スピーディーに保険金を支払うためです。他人事だと考えている人が多いのですが、地震は『起こり得るもの』としておかなければライフプランはもはや成り立たないと私は考えています」

我が家は地震保険に入っているのか。そして、火災保険の補償内容は把握しているのか? 今一度、見直して万が一に備えましょう!


取材・文:佐々木正孝
ライター/編集者。有限会社キッズファクトリー代表。情報誌、ムック、Webを中心として、フード、トレンド、IT、ガジェットに関する記事を執筆している。

編集協力:有限会社ノオト

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取材協力

清水香さん

ファイナンシャルプランナー・社会福祉士
学生時代より生損保代理店業務に携わるかたわら、FP業務をスタート。2001年、独立系ファイナンシャルプランナーとしてフリーランスに転身後、生活設計塾クルー取締役に就任、現在に至る。相談業務、執筆・講演なども幅広く展開、TV出演も多数。『本当に安心な「保険の選び方・見直し方」』(講談社)、『地震保険はこうして決めなさい』(ダイヤモンド社)など著書も多数。

▼生活設計塾クルー
http://www.fp-clue.com/