持ち家のコストとして、意外と馬鹿にならないのが「固定資産税」。土地や家屋といった固定資産に課せられる税金のことだが、その仕組みはやや複雑で分かりづらい。特に家屋に関しては建物の評価が税額算出のもとになるため、増改築を行った場合などは税額が変わってくることも。また、たとえばウッドデッキを新たに設置した場合、屋根のあるなしで課税対象になるか否かが決まったりと、細かなルールがある模様。そこで今回は、固定資産税の仕組みについて、税理士の田中卓也氏に伺った。
●まずは「納税通知書」を正しくチェック
まず、そもそも固定資産税とはどのような税金なのだろうか?
田中氏「固定資産税とは、毎年1月1日に土地や家屋といった固定資産を所有している人に市町村が課す税金のことです。所得税や法人税など自らが税額を計算して申告・納税する申告納税方式に対して、固定資産税は賦課課税方式となっています。賦課課税方式とは納税額を地方自治体が算出し、通知する方法になります」
要するに固定資産税は自分で申告する義務はなく、代わりに地方自治体が納税額を算出してくれる。ただし、送られてくる納税通知書には誤りがないか、自分でチェックすることが必要になるという。では、どのようにして納税額は算出されているのだろうか。
田中氏「固定資産税は、総務大臣が定めた評価基準に基づいて地方自治体が土地、家屋それぞれの課税標準額(固定資産の価格)を算出していきます。そこで算出された課税標準額に1.4%をかけたものが納税額となります(※市町村によっては1.4%以上の税率を課すところもある)。計算式にすると、『固定資産税=課税標準額×1.4%』ですね。また、土地において気をつけなければならないのが、住宅用地のうち200㎡までの小規模住宅用地であれば、課税標準額×1/6が考慮された上で1.4%がかけられます。なお、都市計画税の場合にも都市計画区域内の土地が200㎡までの小規模住宅用地であれば、課税標準額×1/3が考慮された上で0.3%がかけられます。(建物の場合にも都市計画税は0.3%かけられる)そのため、通知される納税額が正しく算出されているか、チェックすることも大事です」
●リフォームの内容によっては固定資産税が減額されることも
毎年、通知される固定資産税だが、課税標準額は3年に1度見直される。一般的な家屋の場合、年々課税標準額は下がる傾向にあるが、「スケルトンリフォーム(建物を骨組み状態に解体して全面的に行う改修)」や床面積の増築などのリフォームの際には、課税標準額は上がる可能性もあるとのこと。
ただし、リフォームをした場合でも、課税標準額が減額されるケースもあるようだ。
田中氏「平成20年1月1日以前からある住宅において、平成32年3月31日までの間に一定の条件を満たした省エネ改修工事を行った住宅には、120㎡の床面積相当分まで翌年度分の固定資産税が1/3減額されます。同様に新築された日から10年以上経過した住宅が一定の条件を満たしたバリアフリー改修工事を行った場合にも税額は100㎡の床面積相当分まで1/3減額されます。さらに、耐震改修工事を行った場合でも減額対象になるので、リフォームを予定している方は一度、調べてみるといいかもしれません」
●屋根付きのウッドデッキは課税対象になる可能性あり
また、意外な注意点も。たとえば、庭部分にウッドデッキなどを新たに設けた場合、固定資産税の課税対象になる可能性があるという。
田中氏「地方税法では"家屋"のハッキリとした規定はされていません。ただ一般的には、土地に定着して建造され、雨風から防げる家屋には課税される可能性が高いとされています。たとえ、居住ではなく、作業や貯蔵などのいかなる目的だったとしても課税対象にはなりえます。そのため、地方自治体が『基礎があり、屋根や壁で覆われている』と見なした場合には課税される可能性が高いと言えるでしょう」
つまり、ウッドデッキであっても屋根や壁があり、雨風をしのげるような状態であれば「家屋」と認定される可能性もあるということ。実際、庭に後から設けた小屋などの場合でも、外壁があり、雨風をしのげる状態であれば家屋として認められた判例も過去にあるそうだ。また、固定資産税の細かなルールとして、地下の駐車場や半永久的な園芸または農耕用の温床施設も家屋として取り扱われ、そこで使用する資材によっても税額は変動するとのこと。さらにいうと、ウッドデッキに屋根・壁を造作して「建物」とみなされた場合、そもそも建築基準法上の建ぺい率の計算にも関係してくる。建ぺい率超過となると違反建築となり、その後の増築などができなくなる可能性もあるためこちらも注意が必要だ。
毎年、納税する固定資産税。持ち家を購入する際、またはリフォームする際にはしっかりと仕組みを把握しておきたい。もし、不安に思った方は税理士事務所や市町村に問い合わせて確認すると良いだろう。
取材・文:小野洋平(やじろべえ)