南海トラフ地震や首都直下型地震など、いつ起こるともしれない巨大地震。いざという時のため、備えは万全にしておきたいところです。
その一つが「保険」ですが、じつは「地震保険」は単独で加入することができず、火災保険に付帯する形での契約になります。さらに、その補償の上限は火災保険の50%にとどまり、地震で全損した場合でも100%の補償を受けることができません。地震による被害への備えを万全にするためには、火災保険とセットの特約をつけて補償額を拡大する必要があります。
地震大国と呼ばれる日本にあって、なぜ単独で地震保険を契約することができないのか? また、地震への補償を手厚くするにはどうすればいいのか? ソニー損害保険株式会社の栗城知加良氏に聞きました。
●地震保険の仕組みとは?
―― そもそも、地震保険はなぜ単独ではなく「火災保険の付帯」という位置づけなのでしょうか?
栗城氏「その理由はやや複雑なのですが、地震保険の成り立ちや仕組みが関係しています。地震保険はもともと1966年に『地震保険に関する法律』が制定され始まりました。各保険会社がビジネスとして行っている火災保険や自動車保険に対し、地震保険は『国による法律に基づいた保険』なんです」
―― つまり、政府のバックアップ(再保険)によって成り立っているんですね。
栗城氏「はい。地震保険の総支払限度額は関東大震災クラスの地震の発生を想定して設定されているのですが、この総支払限度額11兆3000億円のうち、11兆1268億円(2019年1月現在)が政府の責任額となっています。地震等による『被災者の生活の安定に寄与すること』を目的とした制度であり、できるだけ安い保険料で補償を提供できるようにするために火災保険の付帯とし、地震保険単独にかかるコストを抑える仕組みになっているんです」
―― 地震保険を民間の保険会社が独自に運用することは難しいのでしょうか?
栗城氏「自動車保険などであれば統計をもとに年間の発生リスクを予測し設計することが可能ですが、地震の場合は予測が困難です。そのため、地震保険だけではビジネスとして成り立ちにくいのは事実です。ただ、世の中に必要なものですので、政府のバックアップのもと運営されているわけです」
―― そうした背景から、地震保険はどの保険会社でも同じ仕組みになっていると。
栗城氏「そうですね」
―― 改めて、地震保険の概要を教えてください。
栗城氏「地震の揺れによる倒壊や、地震に伴い発生した津波などによる被害に対して保険金をお支払いするものです。契約金額は、法律により火災保険の保険金額の50%までと定められています」
―― 補償の対象となるのは?
栗城氏「対象となるのは居住用の建物と家財ですが、制度の目的としては『被災した方の"生活"を再建する』ための補償であるため、巨大地震の際の保険金の支払いに支障をきたさない範囲内で安定的に運用するために50%という上限が設けられているんです」
●地震への補償を手厚くするには?
―― とはいえ、住宅ローンも残っている状態で被災した場合、全損でも火災保険の50%しか補償されないとなると、被災者の負担がかなり大きくなってしまいます。
栗城氏「その通りです。たとえば家を買いたての方などが全損した場合は、建て直すために住宅ローンが2倍になってしまいますし、定年退職をして収入が年金だけのご高齢の方はそもそも新たにローンを組むこと自体が難しかったりします。国からの支援金が出たとしても、再建するにはとても足りません」
―― では、地震への補償を手厚くするにはどうすればいいのでしょうか?
栗城氏「地震被害の補償を上乗せする特約を付けていただくことです。ソニー損保でも昨年10月に『新ネット火災保険』という商品をリリースしました。地震補償を最大100%(火災保険と同額)に拡大できる『地震上乗せ特約(全半損時のみ)』を、ダイレクト保険会社としては国内で初めてセット可能にしたものです」
―― どんな特徴があるのでしょうか?
栗城氏「まず、インターネットで24時間いつでも見積り・申し込みが可能です。火災保険では国内で初めて、1回の手続きで契約締結まで完了できます。また、あえて地震保険では対象となっている『一部損』を対象外とし、『全損』『大半損』『小半損』に限定しているのも特徴です」
―― それは、なぜですか?
栗城氏「地震の際に被災者の方の負担が大きいのは『全損』『大半損』『小半損』の3つで、そこを手厚く補償する必要があります。地震保険の上乗せ補償として必要な補償に絞り込んで保険料を抑える工夫を行うことで、より必要な方に必要な補償を届けるため、このような設計になっているんです」
―― 特約を付けることで、月々の保険料負担はどれくらい上がりますか?
栗城氏「たとえば、東京都の新築木造戸建て、床面積100㎡で計算すると、国の地震保険が年間3万2900円なのに対し、地震上乗せ特約は4万1548円になります(2019年1月現在)。これはあくまで一例で、新築や中古など条件によって異なります」
―― コストはかかりますが、万が一の備えとしては特約付きのほうがやはり頼もしいですね。
栗城氏「保険については色々な考え方がありますが、より大きな災害に備えておくことが重要なのではないでしょうか。その点、ソニー損保の『新ネット火災保険』は盗難や水漏れなどの補償を取り外して基本補償と地震保険、地震上乗せ特約だけをセットするなど、自分の考え方に合わせてカスタマイズができます。特に、巨大地震について備えておきたいという方にとってはマッチするのではないでしょうか」
これまで大きな災害に遭ったことのない人にとって、被災時のリアルな状況はなかなか想像しにくいものです。しかし、現実にそうした危機が起こり得る以上、平時の今から備えておくにこしたことはありません。いざという時、当面の生活費を支えてくれる補償は何より心強いもの。ぜひ、地震保険のアップデートを検討してみてはいかがでしょうか?