年月を経たからこそ味わいが出るヴィンテージ物。市場では、主にワインや古着、車などで聞かれる言葉ですが、マンションの中にも「ヴィンテージ・マンション」と呼ばれる物件があることは、ご存知でしょうか?
では、一体どんな物件がヴィンテージに括られるのでしょう。不動産関連の幅広い知識を持ち、セミナーなどを行っている、坂根康裕さんに聞きました。
●ヴィンテージ・マンションが生まれた背景
さっそく定義から! と思い聞いてみましたが、「実は、ハッキリと決まっていないんですよね」と坂根さん。
「業者関係者の中には『都心にある坪300万円以上、築年数40年以上の物件で......』といった基準を目安にしているところもあるようですが、不動産業界全体で定めたものはありません。もともと日本人は新築に価値を見出しますし、『古くて良い物件を探す』風潮も一般的ではないんですよね。ただ、90年代初期のバブル崩壊でデフレが続き不動産の価値が下がったのですが、そのときに "あまり下がっていないもの"や、逆に"少し上がったもの"もあると注目されるように。それらを総称する表現として、ヴィンテージ・マンションといわれるようになってきたんです」
そもそも、集合住宅といえば団地や社宅が一般的だった昭和時代の日本。マンションという形態が広まってきたのは、東京オリンピック(1964年)を機に行われた大規模なインフラ整備からだとされています。そこから、都心を中心にマンションの建設が増え今に至るわけですが、年月を経てもなお価値を見出されるような物件に"ヴィンテージ"という冠がついたんですね。
●建物を見るだけではダメ! ヴィンテージ予備軍を見つけるには?
「すでにヴィンテージとされているものは1960年代あたりのものがほとんど。なので、これからマンションを探すのであれば、新耐震基準が採用された1981年以降に設計されたマンションで"これからヴィンテージ・マンションになり得るもの"を探すのも一つの視点かもしれません」
とはいえ......素人にはこれが難しい! 一体、どうやって見極めればいいのでしょうか?
「まずは立地ですね。どんなに魅力的なマンションでも、山奥に建っていてはマーケットとは合致しません。やはり、利便性の高い物件がいいでしょう。近年は田園調布などの高級住宅街より都心がいいという人もいますし、時代によるニーズの変化もポイントにしなければなりません。『3A』と呼ばれ人気の住宅地である赤坂、青山、麻布あたりは、この先も注目されるのではないでしょうか」
さらに、建物以外のこんなチェックポイントも。
「管理状況もしっかり見ておきたいですね。掲示板に期日切れの張り紙があったり、郵便受け付近にチラシが散らばっていたり、自転車置き場が雑然としていたりといった状態のマンションは、管理不十分なので要注意です。また、敷地内の木々の剪定(せんてい)が甘いなど、緑の手入れが行き届いていない場合も同様。こういった部分で、管理者だけでなく住人の『住環境はキレイにしておきたい』といった意識の高さをはかれますよ。建物は年月が経つと朽ちていきますが、周辺の緑や住民同士のコミュニティは成長するもの。長くいい物件でいられるためには欠かせないところです」
このほか、住みやすい間取りであるかどうかも見極めポイントの一つ。リビングなどのパブリックゾーンと、寝室などのプライベートゾーンがキレイに分かれている「PP分離」と呼ばれる間取りは、長く住むうえで最適とされているそうです。「ヴィンテージ」という言葉だけ聞くと、どうしても「オシャレ」といった漠然としたイメージも持ってしまいがちですが、ヴィンテージ・マンションはそういった括りには当てはまらないようですね。
「いわゆる『オシャレ』と言われるものの中には、個性的なデザインも多いですし、気にいる人とそうでない人の差が激しいので一般的な需要には当てはまらないケースもありますからね。それよりも、立地のイメージを踏襲し、その街の印象を引き上げるような外観になっているマンションのほうが好まれやすいでしょう」
定義こそ曖昧ですが、見極めるうえではポイントがたくさん。より良い資産を手に入れるため、参考にしてみては?
取材・執筆:松本まゆげ
フリーライター。編集プロダクションを経てフリーランスに。現在は女性アイドルやアニメの記事を中心に執筆する。2014年にマンションを購入し、マンションの売却などに興味をもつ。
記事編集:有限会社ノオト