寒くなり空気が乾燥しはじめると、起こりやすくなるのが火災。東京消防庁が調査した「住宅火災による火災状況」によると、ここ10年間は減少傾向にあるものの、それでも都内の年間住宅火災件数は1500件近いとか。
●鉄筋マンションなら燃えにくい? 消防庁の回答は
でも、「うちは鉄筋マンションだから、そこまで大きな被害にならないでしょ」と他人事に思ってしまうのも本音。2017年6月にロンドンで発生したタワーマンション火災は、上階へとどんどん燃え移っていき70人もの死者を出していました。日本でこういう心配はないのでしょうか?
「日本の鉄筋マンションは低層高層に関わらず、壁や柱が燃えにくい耐火構造になっています。なので、ロンドンの事例のように大きく燃え広がる確率は低いでしょう。しかし、家の中にある家具類はマンションの構造とは関係なく燃えますし、煙や熱気といった被害は出ます」
こう話すのは、東京消防庁広報課報道係・白石直人さん。では火災が起こりにくい部屋にするには、どうすればいいのでしょう?
「コンロやタバコといった火の扱いはもちろんですが、ストーブの周りに物を置かない、こまめにコンセントの掃除をしてホコリをためないといった最低限の対策は日頃からしておきましょう。加えて、火災報知器や消火器の点検も怠らないようにしてください。設置していても点検していなければ、いざという時に作動しない危険がありますよ」
●「防災品」で自己防衛する意識を持って
また、寝具やカーテン、じゅうたん、エプロンといった家で使う製品を「防災品」にすることで、被害を最小限に抑えることができるとか。これなら、たとえ燃え移っても燃え広がる確率は低くなるそうです。
「防災品に指定されたものは、赤字で『防災』と書かれたラベルがついています。なかには洗濯によって効果が薄れてしまうものもありますが、そういった製品はラベルに注意書きがあるので、買う前にチェックしておくといいでしょう。ちなみに、タワーマンション(高さが31メートル以上の建物)では、居住階に関係なく防災品を使用するよう消防法で義務付けられています」
防災品はわりと浸透していて、デザイン性が高いものもあるといいます。低中層マンションで使っても損はありません。こういった観点で製品が選べることを心に留めておくと良さそうですね。
●延焼を防ぐためにできること
そして、自分ではどうにもならないのが、近隣の建物や隣接する部屋で起きた火災です。
「鉄筋マンションの場合、柱や壁、床から延焼していくケースは少ないですが、ベランダに洗濯物などを干しているとそこから燃え広がる可能性はあります。さらに、窓が開いていたら、風の通り道となりカーテンから中へと火が入り込んだり、逆に隣接する建物のほうに燃え移ったりする危険もあります」
被害を抑えるためには、「洗濯物をなるべく隣の部屋から遠ざける」「目の届かない場所に移動する際は、窓を閉めておく」といったクセをつけておきましょう。また、ツタや枯れ葉、防鳥ネットなどにも注意。防鳥ネットは防災品に変え、ツタや枯れ葉はできる限り処理しておきましょう。この時期、枯れた植物は格好の引火物になってしまいますよ。
「そして、忘れがちなのが煙です。部屋の中に被害が及ばなくても、共用の廊下などに煙が充満することはあります。その可能性を頭に入れておかないと、外へ避難する際、誤って吸い込んでしまう危険が高まりますよ。濡れタオルなどで口と鼻をおさえ、できるだけ低い姿勢になって逃げてください」
火災時は、停止する恐れのあるエレベーターではなく、階段での避難がマスト。そのため、煙対策がより欠かせません。また放火に対しても、窓の外をチェック。とくに1階に住んでいる人は、外に燃えやすい素材を置いていたら危険です。
「火災が起きて、パニックにならない人はいないと思います。そのため、日頃から意識をしておくことが大事です。消火器の置き場所や使い方を確認しておくなど、予めできることはしっかりと。そうしておくことが、いざというときの適切な行動につながります」
「油断は禁物!」と気を引き締めておくことが火災を防ぐ第一歩。乾燥する今の時期だからこそ、一度見直してみてはいかがでしょうか?
取材・執筆:松本まゆげ
フリーライター。編集プロダクションを経てフリーランスに。現在は女性アイドルやアニメの記事を中心に執筆する。2015年にマンションを購入し、マンションの売却などに興味をもつ。
記事編集:有限会社ノオト