「リノベーション」という言葉がすっかり定着した昨今。「リフォームよりも大規模な修繕工事のこと」「間取りまで変えられる」といったリノベーションの定義を知っている人は少なくないと思います。
ただ、多くの人が思い描くのは"一住戸単位"のリノベーションではないでしょうか。実は今、一住戸のみならず、マンション一棟をまるっとリノベーションする「一棟まるごとリノベーション」も増えているらしいんです。
●"一棟まるごと"でマンションがバリューアップ
「『一棟まるごとリノベーション』とは、その名の通りマンションを不動産業者が建物ごと買い取って、各居住空間はもちろん外壁や廊下などの共用部まですべて修繕することです。主に築20〜30年ほど経って、空室が増えてしまった賃貸マンションに施しますね。そうして、分譲マンションとして一部屋単位で販売しています」
こう話すのは、一棟まるごとリノベーションの先駆け「リビタ」の三浦隆博さん。賃貸や社宅の住人は、3〜4年周期で転居することが多いので、賃借人がいる既存のマンションであっても、順次リノベーション・販売を行なうことができるのだとか。
「工事では、外壁の修繕や配管の取り替え、防水工事など、マンションそのものの経年劣化を修復し、デザインも一新します。さらに、20〜30年前にはあまり普及していなかったセキュリティシステムも導入できるので、買い手のみなさんにとってメリットは多いのではないでしょうか」
リビタの場合、居住空間のリノベーションは買い手が決まってから行なうため、ライフスタイルに合わせた自由設計が可能。さらに、住んでからもマンション内でのイベント(ダンス教室、流しそうめん大会など)を主催し、コミュニティ形成の手助けをしてくれるそうですよ。また、実際にリビタが手がけた事例が以下です。
BEFORE
AFTER
●個人オーナーと「一棟まるごとリノベーション」
ちなみに、投資目的でマンションを一棟持っている場合、個人でも建物全体のリノベーションが可能とのこと。
「老朽化が進み、『空室が目立つ』『賃料が下がってきた』といったマンションを蘇らせるには効果的です。ただし、一棟リノベーションするには数千万単位の工事費が必要。借りるにも個人には負担が大きいので、すぐには難しいでしょう」
ただ、過去には個人経営の賃貸マンションを"半分だけ"リビタが購入したケースもあるのだとか。そのときは、オーナーが所有したままの部屋をのぞくマンション全体をリビタ負担でリノベーションしたため、結果的にマンションそのものの資産価値をあげることができたそう。個人オーナーにとっては、こういった形のほうが現実的ですね。
「ちなみに、企業の場合は分譲マンションでも例があります。総戸数15戸のうち10戸をまとめて所有されていたので、それを買い取り、すでに積み立てられていた修繕積立金に加えて弊社でも費用を支出し、マンション全体の大規模修繕と一部バリューアップ工事を行いました。
もちろん、管理組合と協力して行なっていますし、弊社が購入した10戸は室内のリノベーション工事も済ませました。我々が所有する前は長期修繕計画のなかった分譲マンションでしたが、管理会社と調整しながら、新たに長期修繕計画案も策定しました。
また、管理費を下げた分、修繕積立金を上げることで、組合の支払い総額を変えずに計画的な維持修繕を行えるようにしました。残りの5世帯の方にもメリットはあったと思います」
あくまでも少数例ではありますが、個人でも「一棟まるごとリノベーション」はなくはないよう。「オーナー」と呼ばれるみなさん、覚えておいて損はありませんよ。
※写真はすべてリビタ提供
取材・執筆:松本まゆげ
フリーライター。編集プロダクションを経てフリーランスに。現在は女性アイドルやアニメの記事を中心に執筆する。2015年にマンションを購入し、マンションの売却などに興味をもつ。
記事編集:有限会社ノオト