「副業には最適」といわれながら、ハードルが高そうな印象のある不動産投資。自己資金や借り入れ、法知識や管理ノウハウといったトピックに難しさを感じている人も多いでしょう。
今回は、会社勤めのかたわら不動産投資を始め、物件の運営や売買を軌道に載せている3人に、どのようにスタートさせたのか、不労所得を安定させるポイントなど、リアルな声を集めてみました。
●育児休業を2度にわたって取得できたのは不動産投資があってこそ
モツさんは2010年6月から不動産投資をスタート。現在までに17戸の物件を購入しました。2016年の実績では、年間の家賃収入として1,500万円、税金を引いた後のキャッシュフローは年間690万円を実現しています。
「もともと投資に興味は持っていたのですが、勤務先の規定で株式投資やFX、先物取引などはほぼ不可能他に何か資産運用としてできることはないものかと検討した結果、不動産投資を始めることにしました」
初めての物件は現金500万円で区分所有のワンルームマンションを購入。モツさんがローンを借りずに行ったのには理由がありました。
「ローンを組んで手持ちの資金よりも多額の投資ができるのは、不動産投資のメリットです。それもやってみたかったのですが、私は購入する物件の絞り込み、売買の諸手続き、そして物件の管理・運営も未経験。経験もないのにローンを組んで、毎月借金を返済するのは、どう考えても前のめりすぎると思いました。だったら、まずは借金をせずに手持ちの貯金で購入して経験を積んでいこうと考えたのです」
初めて購入した区分ワンルームマンションで退去や入居者募集などの経験を積んだモツさん。この経験をベースに、中古の区分ワンルームマンションを買い増していくかと思いきや、次は区分のファミリーマンションを投資用に購入。これは借金をして物件を購入するためのトライアルだと考えていたそうです。
「多くの方が数千万円の物件を自宅として購入していますよね。そして住宅ローンを返済しています。それであれば、同じような物件を投資用として買うのは練習として最適じゃないか、という思いでしたね」
モツさんはその後、区分ワンルーム、区分ファミリー、区分事務所、戸建て、テラスハウス、一棟アパートや店舗など、さまざまな物件を買い付けていきました。
「たいていは自分の得意な物件タイプに絞るものですよね。私のように『物件の種類は何でもいい』という投資家はあまり見たことがありません(笑)。あえて得意パターンを作らず、多彩な投資スタイルを経験することで視野が広がったと思います。実績を重ねていくことで妻の理解も得られ、不動産投資がますますやりやすくなりました」
現在は不動産投資家のコミュニティにも加わり、交流からも刺激を得ているというモツさん。「精神と時間の自由を獲得すること」を目指しているのだとか。
「男性としてはまだレアケースだと思いますが、育休を2度にわたって取得しました。会社員のキャリアとしては正直マイナスでした。しかし、私はそのリスクを取って家族と過ごす時間、育児の経験、今後について考えを巡らせる時間というリターンを得た――これは素晴らしい、得がたいものです。不動産投投資による安定したキャッシュフローがこれらをもたらしてくれた。私はそう考えています」
●年収370万円からスタートし、単身者のニーズをくみ取って成功
サラリーマン大家からスタートし、現在は賃貸経営のかたわら大学に通っているOGAさん。不動産投資を思い立ったのは26歳のこと。当時の年収は約370万円でした。
「介護福祉士をしていて、手取りは約20万円。この先も給与が上がる見込みはなく、一家がジリ貧になる......という焦りから、不動産投資を思いついたんです。スタートは不動産の勉強から、と言いたいところですが、まずは取り組んでみるのが僕の性分です。売り物件サイトをひたすら見続け購入しました」
最初に買った物件は田園都市線某駅の二世帯住宅。1階にOGAさんご家族が住み、2階を貸して家賃収入を得ようという算段です。
「学生時代からの貯金と妻の貯金を合わせ、1,000万円以下の物件をキャッシュで購入しました。築46年ほどの古い物件でしたが、今考えても割安だったと思います」
2階を貸した家賃収入は12万円。購入前に住んでいた貸家の家賃8万円と合わせて月額20万円が貯金できるようになりました。それまでの貯金は底をつきましたが、安定したインカムゲインは心強い存在に。次なる物件の購入を考え始めたそうです
「年収370万円で審査が通るのかと不安でしたが、不動産会社に相談したところ、手持ちの物件を担保にすることでローンが組めるとのこと。こうして、審査ハードルが比較的ゆるいといわれるノンバンクではありましたが、何とか組むことができました」
不動産投資を始めて9年。3年目で会社を退職して不動産経営一本に注力しているというOGAさん。現在は一棟もののアパートと戸建ての計15棟を所有。1,000万~5,000万円程度の価格帯で購入しているそう。
「僕は戸建てをシェアハウスにして貸していますが、若年層の女性を中心に、確実にシェアハウスのマーケットが形成されています。都心に限られますが、家賃と初期費用を安価に抑え、なおかつ安心・安全に住めるシェアハウスのニーズは高まる一方なんです」
「シェアハウスのメリットは都心部でも高利回りが出せること」とOGAさんは強調します。所有する一棟もののアパートの利回りは15%程度ですが、シェアハウスでは20%以上が見込めるそう。自社管理でコストを抑えつつ、高利回りのシェアハウスをコツコツ増やしていく。それがOGAさんの戦術なのです。
「自社管理を選択したのはコスト面もさることながら、スパイスのきいた賃貸経営ができるからです。管理会社では一律のサービスになってしまいますが、僕はアパートでもシェアハウスでも初期入居費用・保険はなし、家電とインターネット完備といった、現代の入居者に刺さるサービスを実現しています。そこまでフットワーク軽くできるのは自社管理であってこそです」
●築古木造アパートに絞って堅実に進める。現場主義の不動産投資
SEとして働いていた川崎大家さんが不動産投資を始めたのは、長時間労働の会社員生活を脱却し、給与に代わる収入源を模索していたため。株式投資にFX、物販などにトライした結果、継続して収益を上げられる不動産投資に絞ったそうです。
まずは関連書籍を読み込んで勉強を始めたという川崎大家さん。50冊以上を読破し、有料のセミナー、勉強会にも参加。先輩大家さんに積極的に質問をして知識をストックしていったそう。
1棟目の物件はキャッシュ(貯金)で購入し、2棟目からはノンバンク融資、信用金庫、銀行のフリーローンなどを駆使して資金調達。投資を始めて8年目の現在、5棟26室を所有し、年間家賃収入は1400万円。表面利回りは16%をマークするに至りました。
「川崎市から2時間圏内の郊外で、中古の木造アパート1棟ものというスタンスに落ち着いていますが、それまでは区分所有やRCなども見ていました。物件の選定はとにかく数を見るのが大事。『週に1戸以上』をノルマに、とにかく多くの物件を見て目利き力を高めました。
同じ築20年でも程度の良し悪しがわかったり、本で仕入れた見るべきポイントを実際に確かめる事で多くの気づきを得られたりと、収穫は多かったですね。いろいろな物件を見ることで、『築古木造』という現在のスタンスに自然と落ち着いていったように思います。現地に足を運ぶことを重ね、不動産会社の営業担当と知り合うことで、『築9年・利回り15%以上』のお宝物件を購入できたこともあります」
不動産投資で安定した収入を獲得し、ついには会社員生活を卒業。伸るか反るかの投機ではなく、あくまで「投資」。スモールスタートでコツコツ進めることを川崎大家さんはアドバイスしてくれました。
「大きな借金をしてダメな物件を買ってしまうと本当に無残です。そうでなくても、想定外の急な出費はつきもの。手元資金を残しつつ、余裕を持って購入しなければ本当に怖いと思います。最初は戸建など小さな物件から始めるべきでしょう。大きな物件は、後でいくらでも購入できます。遠回りに見えるかもしれませんが、不動産投資で最も重要なのは『破たんしないこと』なのですから」
今回のケースは、いずれもそれぞれが自分なりに分析を重ねたからこその成功例。同様に進めたとしても必ずうまくいくわけではないので、不動産投資を検討する場合は自己判断で行いましょう。
取材・文:佐々木正孝
ライター/編集者。有限会社キッズファクトリー代表。情報誌、ムック、Webを中心として、フード、トレンド、IT、ガジェットに関する記事を執筆している。
編集協力:有限会社ノオト