一家で築20年以上経ったマンションを購入。リノベーションは夫婦の要望通りにしてみたいなぁ......。そう思い調べ始めたところ、気づいたのは「リビ充」というワードを頻繁に見かけること。なんでも、「リビングを充実させること」を指すそう。具体的にどうするのか、もっと詳しく知りたい! そこで、リノベーション会社「空間社」の代表、朝倉美由紀さんに聞きました。
●現代のリビングは単なる「テレビ部屋」にあらず
「リビ充に明確な定義はないのですが、あえて言うなら『家族のコミュニケーションを目的としたスペース』ですね。以前はリビングというとテレビを観るのが主で、それ以外のとき、子どもは自分の部屋にこもるのが一般的でした。しかし、近年は子どもを部屋に押し込むのではなく、リビングに集おうという形に変化しています。日々の勉強もリビングでやるという家庭が多いようです。そうすることで、家族全員が長い時間同じ空間にいられますし、コミュニケーションも取りやすいんです」(朝倉さん 以下同)
こういった傾向になったのは、働くお母さんが増えたことが一因なのだとか。以前より家にいる時間が少ないぶん、家族とのコミュニケーションの場を"充実"させたい。そのために、リビングがより多目的になったようです。
「個々にやっていることは違っても目は行き届く。これだけでも、安心感が違います。実際、現代の間取りはLDK一体型がほとんど。とくに小さいお子さんを持つご家庭のリノベーションでは、リビングに勉強スペースを作ることを前提に話が進みます。『子ども部屋は当面いらないです』とおっしゃる方も多いですね。また、働き方の変化により家でお仕事をされる方も増えていますが、そういうご家庭からは『リビングに書斎を作って欲しい』という要望があがります」
ちなみに、こういったスタイルは最近増えているわけではなく「少なくとも10年はベーシックとして扱われています」と朝倉さん。「リビ充」と言われ取り沙汰されたのが最近のため、一般的にはトレンドだと思ってしまいがちですが、リノベーション業界ではすでに定着していたんですね。
●古い間取りの物件をリビ充させるには?
ともあれ、築20年以上の中古マンションだと間取りは旧時代的なものが多く、キッチンが独立していたりリビングの横に和室が隣接しその分リビングがこじんまりしていたりと、現代のスタイルには合っていないことも。こういった物件を「リビ充」化するには、どうするのが得策?
「各ご家庭の生活スタイルがあるので一概には言えませんが、キッチンをオープンにしたり和室をなくしてそのぶんリビングを広くしたりする改造が一般的ですね。そして、必要に応じてリビング内に勉強スペースや仕事スペースなどを作る流れになるでしょう。平米数の関係でリビングをそこまで広げられない場合はソファを置かず、テーブルを置けるスペースをひとつだけ作って、そこにローテーブルを。こうすれば、リビング兼ダイニングにできます」
また、リビングを広くするために個室を狭くするといったケースも多いとか。洋服は、別に設けたウォークインクローゼットへ。現代では、個室というと主に寝るための部屋なので、そこまで広々としている必要はないみたいです。
「リノベーションの依頼でも、個室は低い予算でシンプルにして、LDKにお金をかける方が多いですよ。それに、リビングをただ広くするだけでは意味が無いので、隅々まで有効活用できるようレイアウトにもとことんこだわります。たとえば、畳を敷いた小上がり(一段高い場所に設けた空間)にテレビボードを作ると寛ぎやすいですし、段のところに収納も作れるので空間を有効活用できますね」
実際にリノベーションした部屋の様子を見せてもらいました!
BEFORE
AFTER
ちなみに、子どもが2人いる4人家族が住むマンション(70平米)で、LDKのみリノベーションするとなると、費用は500~600万円ほどになるそうです。「やってみたいけど費用的に今すぐはムリかな......」という人は、使っていない和室にラグを敷いてソファを置いてみたり、リビングに勉強机を持ってきたりするだけでも違うとのこと。
単なる「テレビを観る部屋」だったリビングは、いつしか家族の日常を支える多目的スペースへ。そして、あたたかい家庭を作る重要な要素になっていたんですね。
取材・執筆:松本まゆげ
フリーライター。編集プロダクションを経てフリーランスに。現在は女性アイドルやアニメの記事を中心に執筆する。2015年にマンションを購入し、マンションの売却などに興味をもつ。
記事編集:有限会社ノオト