親が他界して空き屋になった実家を売却するタイミングと注意点

親が他界して空き屋となった実家を売却する場合、どのようなことに注意すればいいのでしょうか? 『実家の処分で困らないために 今すぐ知っておきたいこと』(かんき出版)の著者・高橋正典さんにお聞きしました。

「空き屋となった実家を売却するには、"売れる不動産"にする必要があります。そのためには、相続の手続きと登記簿や土地の境界線の確認をしておきましょう」(高橋さん 以下同)

具体的にどのようなことをしたらいいのか。高橋さんによれば、次の3つのポイントがあるといいます。

売れる不動産にする3つのポイント

ポイント1. 相続の手続き

「兄弟姉妹がいて実家を相続することになった時は、誰か一人が相続し、ほかの人は現金など別の方法で相続を考えましょう。これは、仲の良い兄弟姉妹であっても先々のトラブルの火種になりやすいから。誰か一人が売りたくても反対者がいれば売却はできませんし、実家から近い人にばかり維持管理の負担がかかると、遠方に住む兄弟姉妹への不満が爆発するといったこともあります」

ポイント2. 登記簿の名義の確認

「『売れる不動産』にするには、現在の所有者に名義変更をする必要があります。しかし、古い家の登記簿では、父親が亡くなったときの相続で母親への名義変更がされていない、祖父母の代から名義変更がされていないといったケースもあります。登記簿の名義確認は必ずしておきましょう。」

ポイント3. 土地の境界

「土地の境界が定まっているか確認します。都心部でも土地の境界線がはっきりしていないケースがあり、隣人に話してもすぐには承諾の印鑑がもらえないことの方が多いのです。土地の境界線が決まっていないと、売却はもちろん、兄弟間で土地を分割(分筆)することも『物納』もできません」

売却は「空き家に係る譲渡所得の特別控除」に注目!

売却の条件が整ったら、次に気になるのは税金の問題です。相続での売却については税負担を軽くするためのさまざまな特例があります。中でも注目したいのが、2016年4月1日から2019年12月31日までの譲渡(売却)に適用されることになった「空き家に係る譲渡所得の特別控除」の特例です。

「この特例では、譲渡額が1億円以下などの一定の条件を満たすことで、譲渡所得に『3000万円の特別控除』が適用されます。この控除の対象になるのは、2013年1月2日以降に不動産の相続を開始した場合、相続の開始日によって控除の適用となる譲渡期間が変わります。ちなみに、2013年1月2日~2014年1月1日に実家を相続した場合では、2016年中に売却すると『3000万円の特別控除』が受けられます」

<例>
相続の開始時期:2014年1月2日 売却時期:2016年12月31日
取得価格と売却価格:親が1974年に1200万円で取得した家を5000万円で売却
※減価償却は考慮していません

5000万円ー1200万円=3800万円
3800万-3000万(控除)=800万円 
譲渡所得の800万円が課税対象となる。
特別控除が適用されない場合では、3800万円が課税対象となる。

「売却額が3000万円以下で条件を満たす場合は、税金額は0円です。2013年1月2日~2014年1月1日に空き屋になった実家を相続した人は、今が売却を考えるよい機会といえます」

<参考>

すぐには、相続した実家の売却は考えていない場合でも、客観的に見てその物件がそのような状態にあるかを知っておくことは大切です。相続についての知識がある不動産会社や一般社団法人相続支援士協会などの団体などで相談してみましょう。

取材・執筆:川野ヒロミ
埼玉県出身。1998年よりイラストレーターとライターの2本立てでフリーランスで活動。大手企業のWebサイトの立ち上げなどにも関わる。モットーは「ヒト、コト、モノをわかりやすい言葉で伝える」。

編集協力:有限会社ノオト

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取材協力

高橋正典さん

業界実績20年で1万人もの購入希望者と関わるなど、不動産売買市場を熟知する不動産コンサルタント。また、自らも不動産会社価値住宅株式会社(旧:株式会社バイヤーズスタイル)を経営、携わった売買契は約2000件にも及ぶ。一般社団法人相続支援士協会理事、一般社団法人住宅履歴情報蓄積・活用推進協議会理事。著書に『プロだけが知っている!中古住宅の魅せ方・売り方』(朝日新聞出版)ほか多数。
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