不動産広告はチラシも優良な選択肢!現役不動産営業マンが教える物件購入検討時の勘どころ

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家の購入を考えたら、まず始めたいのが物件の情報を収集すること。インターネットやフリーペーパー、街の不動産屋など、さまざまな手段がありますが、新聞の折り込みチラシ、はたまた街角で見かける張り紙といった「紙」の媒体も見逃せません。

ソニー不動産エージェントの鈴木勝博さんに聞いてみると、紙媒体には意外な長所があり、物件探しの優良な選択肢になるそう。果たして、紙の不動産広告にはどんなメリットがあるのでしょうか。そして、どんな点をチェックすべきでしょうか。不動産広告のイロハを聞いてみました。

●良い物件を探すなら新聞選びから!? 不動産広告で知っておきたいこと

膨大な情報があり、比較・検討も手軽にできるインターネット。物件探しには最適のように思えますが、実は紙媒体ならではの利点もあるのだとか。

「都市部の物件ではインターネットによる情報収集、比較検討が主流になってきていますが、郊外や地方ではネットよりも紙媒体の方が強いですね。戸建て物件が多いエリアだと、物件情報はほとんど紙媒体で流通しています」(ソニー不動産 鈴木さん 以下同)

紙の不動産広告の代表格といえば、新聞の折り込みチラシです。鈴木さんによると、不動産広告は、地域にもよりますが、新聞社によりそれぞれターゲットとする購読者層をねらった広告が展開されるそう。

とはいえ、気になるのが情報の鮮度。公開スピードはインターネット広告の方が速そうな気がしますが......?

「物件を専任媒介で預かった不動産会社は7営業日以内に指定流通機構(レインズ)に情報を登録する義務があります。地域密着型の営業スタイルを取っている不動産会社は、週末に新規専任媒介業務を受託した場合、火曜日に広告を発注して、その週の土曜日の新聞に折り込みチラシを入れるというサイクルで回しているところもあります。最短5日間で広告が出回るため、紙の広告だから遅いということはありません」

広告には一つの物件が載った単独チラシ、数戸の物件を集めた合同チラシ、数十件の物件を紹介する集合チラシなど、バリエーションがあります。

「これらのうち、不動産会社が注力するのは単独チラシ。短期的に効果を得るために用意されるので、新しい物件情報がほとんどです。一方、合同チラシや集合チラシは年始やGW明けなどをねらって展開されるので、マーケットに出てしばらく経った物件が多くなります。最新情報は単独チラシで得るのが正解でしょう」

suzuki

●道路や土地の寸法、デフォルメされてない? 区画図にも意外な落とし穴が

さて、週末の朝に新聞を開いて不動産広告を手にしたとしましょう。チラシにはキャッチフレーズや販売価格、物件の図面や間取りなど多くの情報がズラリ。実は、これらの内容も業界が定めたルールに沿って盛り込まれています。

「宅地建物取引業法、不動産公正取引協議会が定めた不動産の公正競争規約で禁止されているのが優良誤認(内容について、実際のものよりも著しく優良であるとする表示)や、有利誤認(実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると誤認させる表示)の記載がある広告です。具体的には、これは良いと消費者に思わせておいて、実際にはそうではない広告のことをいいます」

たとえば、次のような表現が誇大広告に該当するそう。

■誇大広告のフレーズ一例

  • 日当たり最高
  • 最上級の眺望
  • 抜群のロケーション
  • 激安、格安
  • 特選、厳選
  • 当社だけ、ほかに類を見ない

「こういった表現をしている広告は、その表示内容を裏付ける合理的な根拠を示す資料を有している場合を除き、上記の用語を使用してはならないとされています。資料を有していない場合、優良誤認・有利誤認広告に該当する可能性があります。『富士山が見える部屋』という情報も、『天候に左右されます』『冬の晴れた日には......』など、条件を明記しなければなりません」

また、物件のスペックで注意したいのは、駅やバス停から物件までの距離を表す「徒歩○分」という項目。こちらは分速80mで計算されていて、1分未満の端数が生じた時は、これを1分に切り上げて表示しなければなりません。つまり、駅から81mであれば徒歩2分になるということ。ただし、信号や踏切の待ち時間は加味されません。

「改札からではなく、物件に一番近い出入り口からの計算。たとえば、地下鉄は改札にたどり着くまでに時間がかかることもありますよね。あくまで目安として考えて、実際の時間は表示よりもかかると見込んでおいてください」

土地の形、道路との接点を示す区画図も、鵜呑みにせずにチェックしたいところです。土地の坪数や奥行き、幅の表示、道路の幅などの数字は正しくても、きれいな地形に整えて表示されていることがあるからです。

「正方形や長方形の整形地に見えても、実際は細長かったりする、というケースですね。土地の場合は道路、奥行き、間口が寸法通りの縮尺か? ちょっと怪しいなと思ったら数字をよく見た方がいいでしょう」

図面を丁寧に、実直に作っているかどうかが不動産会社の姿勢を伝えてくれます。同様に、物件概要では「販売価格」「物件の面積」「築年数」といった基本情報がわかりやすく記載されているかをチェックしましょう。「応相談」「お問い合わせください」といった記載、曖昧な表現はおざなりな営業スタイルを表しているかもしれません。

不動産広告

●おとり広告ってあるの? 気になる現実が明らかに

先に挙げた宅地建物取引業法、規約などでは「おとり広告」も禁止されています。これは、架空だったり契約済みだったり、実際には取引できない物件を記載した広告のこと。魅力的な物件で引き寄せ、他の物件を紹介して営業することは、法律・規約に抵触します。

「おとり広告が見られたのは90年代頃のことで、最近はあまり見られません。インターネットが普及して物件情報が透明化してきたため、架空物件や契約済み物件で誘引できなくなっているんです」

ただし、電柱などに貼ってある不動産広告には注意が必要なようです。

「『キャンセル住戸』『家賃並みの月々8万円台から』『100万円プレゼント』『家具進呈』と、思わず興味をそそられる表現でアピールしているものがよく見られます。しかし、物件の詳細情報はありませんし、連絡先も携帯番号だったりします。物件がない『おとり広告』とはいえませんが、相場より高いものを押し付けられるケースがほとんどだと思いますので、連絡するのは避けたほうが無難でしょう」

特に「キャンセル住戸」については、大手が取り扱うマンションはローン審査もしっかりしていて、よほどのことがない限りキャンセル住戸はでないのだとか。

不動産広告は、物件購入者にとっては仲介会社が信頼に足るかどうかを見極める手段の一つでもあります。広告の内容が、誇大広告だったり、記載された情報が不正確だったりするものは避け、情報がしっかり記載されている広告を選び、安心・安全に不動産取引を進めましょう。

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取材・文:佐々木正孝
ライター/編集者。有限会社キッズファクトリー代表。情報誌、ムック、Webを中心として、フード、トレンド、IT、ガジェットに関する記事を執筆している。

編集協力:有限会社ノオト

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取材協力

写真:鈴木勝博
鈴木勝博

ソニー不動産 売却コンサルティング部 課長代理。1997年大学卒業後より大手不動産仲介会社へ勤務。個人営業と法人営業を経験し、2016年にソニー不動産入社。 不動産の価値の最大化(売主さまの手取り額の最大化)を追求することが信条。