より自分らしい住まいを求めて、今暮らしている家をリフォームしたい。こう考えている人もいるのではないでしょうか? 一戸建てに比べてリフォームの自由度が高いマンションですが、集合住宅ならではの制約や決まりがあるなど、配慮すべきことは少なくないといいます。
「マンションリフォームでは、個人でリフォームできる範囲(専有部分)とできない範囲(共用部分)があり、構造面での制約もあります。また、区分所有法という法律に沿って作られたマンション管理規約や使用細則といった約束ごともあります。規約を破れば、工事停止や裁判で現状回復が求められることもあります」
こう話してくれたのは、一級建築士事務所 OfficeYuu代表で住宅リフォームコンサルタントの尾間紫(おまゆかり)さん。そこで今回は、マンションのリフォームで押さえておくべき点について、尾間さんに教えてもらいました。
●何から始めればいい? リフォームの手順に注目
尾間さんによれば、マンションのリフォーム手順は次の通りだそう。
■リフォームをスムーズに行う手順
- 家族で話し合い要望をまとめる
- マンションの構造の確認、管理規約と使用細則の確認
- リフォームプランを考えながら依頼する会社を選ぶ
- 契約、工事計画の決定
- 事前準備(管理組合への届け出、近隣への挨拶など)
- 着工
- 完了検査
「まず重要なのは、家族でよく話し合い、今の家で不便なことや困りごと、リフォームへの要望をまとめることです。その際には、できるだけ具体的に細かく書き出していきます。また、その部屋に住む期間によってリフォーム内容は変わってきますから、将来設計などを含めて考えてみることも大切です。これが最初の一歩になります。その後、管理規約の確認などを行います」(尾間さん 以下同)
そして、リフォームをスムーズに進める上でもトラブルを回避する上でも、慎重に進めたいのが手順2「マンションの構造の確認、管理規約と使用細則の確認」と、手順3「リフォームプランを考えながら依頼する会社を選ぶ」です。
「マンションの構造によって『できること』『できないこと』がありますから、構造を知るために図面が必要となります。新築で購入している場合は、購入時に受け取る資料の中に図面がありますが、中古マンションの購入では図面を渡されないケースもあります。図面がないときは管理組合に問い合わせて手に入れておきましょう。同時にマンションン管理規約や使用細則を確認し、どういった内容が書かれているかを少しでもいいので把握しておくことが大切です」
図面を用意し、管理規則や使用細則を確認したら、リフォームをお願いする会社を選び始めましょう。
「一般の人には、考えているプランが実際にできるかどうかの判断は難しいところ。たとえば、規約に反して無断で共用部分に穴を開けてしまうと、現状回復命令が出る可能性があります。また、キッチンやトイレなど水回りの移動では、構造によって移動できる範囲が決まります。そのため、プランを考え始めた時から、専門家と一緒に内容をすり合わせていくことが大切です。このとき、複数の会社と相談してプランと見積もりを出してもらえば、より自分たちの要望を叶えてくれそうな会社や相性の良い会社を選ぶこともできますよ」
●近隣への挨拶は必須!事前準備で注意したいこと
工事計画が決定するまでを"前半の山"であるとすれば、手順5「事前準備」が"後半の山"だと尾間さんは強調します。挨拶はやっぱり欠かせないということ......?
「リフォームでは大きな工事音や嫌な臭いがすることもあります。事前に話があれば許せるけれど、いきなりでは許せないこともあるので、近隣の方への挨拶は必ず行いましょう。中には、事前にご近所に承諾をもらわないと工事ができないマンションもあります」
ほかにも準備が必要なことがありますか?
「内側にあるものを取り払って新しく作り直すような場合では仮住まいが必要になりますし、仮住まいをするほどではなくても、トランクルームに家具を預ける方は結構いらっしゃいます。片付けも必要なので、事前準備の期間と費用をみておくことは非常に重要です。また、工事用車両の駐車場の確認も必須。特に大規模修繕と呼ばれるマンション全体の工事時期に重なると、駐車場の確保が難しくなります。くれぐれも大規模修繕とは重ならないように気をつけましょう」
せっかくのリフォームですから、トラブルが起きないように、また、要望がしっかりと叶えられるようにしたいですね。基本的な流れを把握したら、信頼のおける会社の担当者に相談したり、説明を受けたりしながら、納得のいくリフォームを実現させましょう。
取材・執筆:川野ヒロミ
埼玉県出身。1998年よりイラストレーターとライターの2本立てでフリーランスで活動。大手企業のWebサイトの立ち上げなどにも関わる。モットーは「ヒト、コト、モノをわかりやすい言葉で伝える。
編集:有限会社ノオト