ショッピングサイトやフリマサイトの普及により、配達物が激増している昨今。受取人不在による再配達の増加が社会問題化しています。マンションに共用の宅配ボックスがあれば話は別ですが、ないことが多いのも事実。共働きやひとり暮らしの人は日中受け取ることができず、やむを得ず再配達をお願いしてしまうということも多いのではないでしょうか?
そんな中で注目を集めるのが、個人用の宅配ボックス。玄関の外に置くタイプのもので、配達物が届く日に出しておけば、不在の場合もその中に入れてもらうことができます。これなら、受取人も宅配業者もラクですよね。
●個人用宅配ボックスを共有スペースに置くことの是非
ただ、ひとつ気になるのが「玄関の外に置く」という部分。戸建ての場合は別としても、分譲マンションの場合、玄関の外は占有敷地外で共有スペースのはず。そんな場所に、入居者が無断で置いても良いものなのでしょうか? 越谷大家塾講師の井上嵩久さんに聞くと、こんな答えが。
「結論から言うと、アウト。個人用宅配ボックス自体、通路をふさぐほど大きなものではないはずですし、置くとしても一時的なので見逃されていることもあるようですが、あくまでも共有部分ですので勝手に使用することはできません」(井上さん 以下同)
ちなみに、大型マンションなどでよく見られるドアの前の専用ポーチ内も、厳密にいうと「荷物を置いてはいけない」と定められていることが多いとか。「そうだったの!?」「そんなに厳しいんだ」と思った人もいるのではないでしょうか? 違反していないか、住んでいるマンションの管理規約を今一度確認してみましょう。
「分譲マンションで、どうしても戸外に私物を置きたいのであれば、管理会社や管理組合に相談を。OKがもらえるかどうかはわかりませんが、伝える価値はあるでしょう。より住みやすいマンションにするためには、入居者と管理者が意見を交わし、相談・工夫していくことが必要ですからね」
個人ではなく、いくつかの世帯で協力して意見を出すといった方法も効果的かも。そういった積み重ねにより「絶対NG!」だったものが、「ここまでならOK」「共用の宅配ボックスを設置しましょう」に変わることだってありそうですよね。
また、消防法には下記の記述があります。
第八条 学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店(これに準ずるものとして政令で定める大規模な小売店舗を含む。以下同じ。)、複合用途防火対象物(防火対象物で政令で定める二以上の用途に供されるものをいう。以下同じ。)その他多数の者が出入し、勤務し、又は居住する防火対象物で政令で定めるものの管理について権原を有する者は、政令で定める資格を有する者のうちから防火管理者を定め、政令で定めるところにより、当該防火対象物について消防計画の作成、当該消防計画に基づく消火、通報及び避難の訓練の実施、消防の用に供する設備、消防用水又は消火活動上必要な施設の点検及び整備、火気の使用又は取扱いに関する監督、避難又は防火上必要な構造及び設備の維持管理並びに収容人員の管理その他防火管理上必要な業務を行わせなければならない。
総務省消防庁に聞いたところ、「宅配ボックスのサイズや形状によって、消防法に該当するものかどうかはケースバイケース。個別に消防署に確認した方が確実」とのことでした。とにもかくにも、無断はNG! 購入を考えていた人は、買う前に確認必須です。
●需要の高まる宅配ボックス、今後どうなる......?
宅配業者の負担が増したことを受け、政府が動き出しているとか。
「共用宅配ボックスの設置費用を半額補助する制度が検討されるなど、対策が進んでいます。配達物はこれからも増えていくでしょうし、入居者からも宅配ボックスの需要は高い。共用のものがこのまま普及していくといいんですけどね」
福井県あらわ市は7月5日、パナソニックと行った戸建て向け住宅宅配ボックスの実証実験で再配達率が激減した結果から、ほかの自治体に先駆けて宅配ボックスを設置する市民に対し、製品代金の一部を補助すると発表しました。マンションの場合はまだまだ難しい面がありそうですが、再配達問題が今後どうなるのか、注目を集めそうです。
取材・執筆:松本まゆげ
フリーライター。編集プロダクションを経てフリーランスに。現在は女性アイドルやアニメの記事を中心に執筆する。2015年にマンションを購入し、マンションの売却などに興味をもつ。
記事編集:有限会社ノオト