住まなくなった持ち家は売却と賃貸のどっちにする? その判断ポイントと理由

持ち家はあるけれど、さまざまな理由で別の場所へ住み替える場合があります。そこで悩むのは、今まで住んでいた家をどうするかということ。売却するか賃貸にするかで迷ったときの判断ポイントやその理由について、社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長の吉崎誠二さんにお聞きしました。

●売却か賃貸か――重要なのは今後住む人がいるかどうか

売るにしても貸すにしても、今の家に関係する情報といえば築年数や立地条件、住宅ローンの有無などがあります。迷ったときには何から考えればいいのでしょうか?

「最も大切な判断ポイントは、『その家に家族の誰かが住む可能性があるかどうか』です。いずれ息子さんや娘さんなどご家族がその家を使用するのであれば賃貸にして所有しておく方がいいでしょう。しかし、その予定がなければ売却をおすすめします」(吉崎さん 以下同)

家族が住む予定がないときに売却を勧める理由の一つに、一戸建ての場合は賃貸需要の低さがあるのだとか。

「地方では一戸建てを賃貸にしているケースもありますが、首都圏、特に都市部では賃貸物件の90%~95%がアパートやマンションです。特に、家賃が高い一戸建ての賃貸需要はもともと少なく、駅から離れた郊外の住宅地では、購入した場合の月々のローンと賃貸料に大差がないなどの理由から、一戸建てを借りたいという人はさらに少ない傾向にあります」

●郊外の家はどうする!?

吉崎さんによれば、持ち家が郊外にあって家族が住む予定がない場合は、立地条件が良くても早めに手放すことも検討する余地があるとのこと。その理由は?

「街は時間の経過とともに変化していくので、その変化の状況を自分で捉えて決めていくことが大切です。郊外の住宅地は、商業地区などに変わることはほとんどありません。将来的にも住宅地のままであれば、やがて街全体が高齢化し人口が減少していくでしょう。人口減少は街の衰退につながり、不動産の価値も下がっていきます。現在の郊外の地価は下がり基調にありますから、手放さずに貸すというのは不利な選択。借り手がつくような立地条件であっても、いずれ売るのであれば売却は早めがいいです」

●都市部なら賃貸住宅に建て替えるという選択肢も

一方、住宅地が変化していく都市部では、家ではなく土地に目を向けると選択肢が広がるようです。

「都内では一般的な住宅地だった地域に賃貸住宅が増えて、様変わりしてきている所があります。たとえば、池袋から近い南長崎や椎名町、東京メトロの千川駅周辺などです。こういう地域では、一戸建てで残すよりも狭小でも賃貸住宅に建て替えた方が有効に利用できます。ビルの谷間にある一戸建てなども、家を取り壊して賃貸住宅や賃貸併用住宅に建て替えるケースが増えています。また、売却する場合でも、都心へのアクセスが良い地域に賃貸住宅を建てたい業者は多いですから、一戸建てを個人に売るよりも業者にその土地を売る方が高く売れる場合があります」

●知っておきたい都市部の家を手放すタイミング

もし売却するなら高額でと考える人も多いでしょう。最後に持ち家をより良い条件で売却するタイミングについてお聞きしました。

「バブル以降の日本では、おおよそ7年のサイクルで、不動産市況・住宅市況の盛り上がり、あるいは転換点となる年がきています。バブル崩壊による地価の急落が収まったのが1994年、ITバブルのピークが2001年、ミニバブルのピークは2008年で、その後は2015年をピークとして、現在は横ばい、もしくは低くなる転換期にあります。もしより良い条件で住宅の売却を考えているのならば、2022年頃に盛り上がりが来ると期待するか、さもなければ今すぐ動いて売却するのがいいでしょう」

住み慣れた家には愛着があるだけに、売却か賃貸か悩む人は少なくありません。まずは夫婦や家族でよく話し合い、その街の変化を客観的な目で捉えて判断していきましょう。


取材・執筆:川野ヒロミ
埼玉県出身。1998年よりイラストレーターとライターの2本立てでフリーランスで活動。大手企業のWebサイトの立ち上げなどにも関わる。モットーは「ヒト、コト、モノをわかりやすい言葉で伝える」。

編集協力:有限会社ノオト

この記事をシェアする

取材協力

吉崎誠二さん

不動産エコノミスト。社団法人 住宅・不動産研究所 理事長。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、全国新聞社、地方新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。主な著書に『データで読み解く 賃貸住宅経営の極意』(芙蓉書房出版)など。

▼吉崎誠二 公式サイト
http://yoshizakiseiji.com/