古い物件を大幅に改装する「リノベーション」。最近ではすっかり定着し、当初は新築希望だった人でも、「内観は新築と変わらないから」と中古のリノベ物件も視野に入れる人が増えているそうです。では、実際にリノベ物件はどのくらいお得でどんなメリットがあるのでしょうか? 『プロだけが知っている!中古住宅の選び方・買い方』 (朝日新聞出版)の著者の高橋正典さんに聞きました。
●中古は新築よりも○○がいい?
まずは金額面を新築と比較。都心に限っていうと「新築は中古より3割以上高い」ケースもあるとか。
「立地や広さなどが異なるさまざまな物件から算出した平均値なので、特定の物件を比較すると誤差は生じると思いますけれどね。また、郊外になると不動産の取引量そのものが下がるので、中古住宅の価格はさらに安くなり新築と中古の価格差はより広がる傾向にあります。リノベーションのコストを踏まえても、中古のほうが安くあがると思いますよ」(高橋さん 以下同)
同条件の物件(都心)と仮定して比較すると、新築なら2600万円以上ですが、中古だと3割安い2000万円。これが60平米だった場合、中古のリノベーションにかかる費用は約400万円で、合計しても2400万円。最も差の少ない比較なので若干の価格差ではありますが、新築よりも安くなるのです。
「それに、新築は住み始めた瞬間から中古になり、価値の下落率は元々中古の物件より大きくなります。不動産の価格が下落傾向だとより大きくなるので、将来売却する場合、中古の方が損失は少ないですよ。ちなみに、今は用地が減っているため、新築は駅から離れた場所に建てられることが多い。駅近が良いのであれば、中古物件のほうが探しやすいかもしれません」
もちろん、すべてに当てはまるわけではありませんが、中古物件はコスパも利便性も良いことがあるようです。
●リノベ物件を買う? 買ってからリノベする?
ただ、単にリノベーションといっても、「リノベ済みの物件を買う」と「買ってからリノベ」でも違いが。
「前者は、不動産会社が物件を購入後リノベーションして売りに出すという、販売手法のひとつ。売れ筋を考慮したリノベーションになるため個性的な要素は少ないですが、すぐに入居できる手軽さはありますね。対する後者の『買ってからリノベ』は、どんな部屋にしたいか、どんな建材を使いたいかなど、イチから考えなければならずかなりの手間を要しますが、『もう少し安くしたいから、お風呂の設備のランクを下げよう』など、自由にコストダウンできる。なにより、自分色に染められるのは大きな利点ですね」
ちなみに、前者は不動産会社側の人件費や利益が加算され販売額が割高になりますが、個人が注文するより価格が抑えられている場合もあるため、「どちらが高い」とはいえないとか。また、物件価格にリノベーション費用が含まれていることから、住宅ローンでリノベーション費用分も借入できるメリットや、「2年間の瑕疵担保責任」を販売した不動産会社が負うため漏水などのトラブルに対する安心も。どちらをお得と感じるかは、買い手次第なのかも。
●増えている"リノベ民"こんなところに注意!
「ともあれ、マンション選びは費用だけでなく"住み心地"も重要。『リノベ済み』だと、間取りや設備、使用建材なども不動産会社任せのため、『入居してから壁の薄さに気づいた』といった問題に見舞われることがあるんです。相当満足のいくリノベ済み物件があれば話は別ですが、自分でリノベするほうがそういった面では安心かもしれませんね」
ただし、そこで注意したいのは自分色に染めすぎないこと!
「自分好みを追求した結果キワモノになってしまうと将来売りにくくなり、結果資産価値が下がる可能性もあります。『一生住む予定だから関係ない!』と思っていても、思いがけないキッカケで環境は変化するもの。ある程度は一般向けを意識するといいでしょう」
また、物件選びの段階では"管理"にも注目。共用部分の手入れは行き届いているかもしっかりチェックして、安心して住めるマンションかどうかを見定めましょう。
「同時に修繕計画の確認もしておくといいでしょう。とくに、築年数が古ければ古いほど給排水管取り替え工事の確認は必須事項。リノベーション後に工事が必要と判明してしまうと、その間かなりの騒音が出るなど、生活に大きな支障をきたすことになってしまいますよ」
十人十色のライフスタイルがある現代。自分らしい家にできるリノベーションは、今後も需要が増えていくはず! みなさんも選択肢に加えてみませんか?
取材・執筆:松本まゆげ
フリーライター。編集プロダクションを経てフリーランスに。現在は女性アイドルやアニメの記事を中心に執筆する。2015年にマンションを購入し、マンションの売却などに興味をもつ。
記事編集:有限会社ノオト