ベテラン不動産営業マン vs. 不動産価格推定エンジン 物件の査定額に差が出るのか検証!

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従来、不動産売却価格の算出においては不動産営業マン※1が物件を査定し、価格を算出するということが一般的でした。

ところが、近年はさまざまな業界で、テクノロジーを既存のサービスと融合させる動きがあり、不動産業界でも「不動産テック(Real Estate Tech)」という「不動産」と「テクノロジー」を掛け合わせた造語のもと、ITを用いて不動産関連サービスを進化させようする試みが活発になりつつあります。

ソニー不動産では、「不動産テック(Real Estate Tech)」の取り組みの一環として、ディープラーニング技術※2を用いて不動産成約価格を算出する「不動産価格推定エンジン」を開発しています。

「不動産価格推定エンジン」を用いれば、築年数や環境など、物件に関する条件を多角的に分析し、現状の推定価格を統計的にシミュレートすることが可能です。ヤフーとソニー不動産が共同事業として進めているサービス「おうちダイレクト」でも「不動産価格推定エンジン」の機能が提供されています。

しかし、「コンピューター上ではじき出された数字が、どこまで信用できるものなのか」と疑問に思う人もいるのでは? そこで今回は、実際に自宅マンションの売却を検討中というIさん宅を事例に、ベテランの不動産営業マンと不動産価格推定エンジンによる"査定対決"を行いました。

●現地を訪れ、壁から天井まで隅々をチェック!

初秋の某日。ソニー不動産の売却コンサルティング事業部 部長の上出 昇さんと共に訪れたのは、大田区内の大型マンション。最寄り駅から徒歩3分ほどの好立地で、近隣には飲食店や公園、保育園もそろっています。「夫が転勤族なので、必要に応じてすぐに売却できるよう、駅近の物件を選びました」というIさん。さっそく、上出さんが室内の各ポイントを丹念にチェックしていきます。

物件の査定をするエージェント

「私の場合、実際にここを訪れる人と同じように、玄関から順に各部屋を見ていきます。とりわけ重点的に見るのは天井と壁。天井にシミが認められれば、上階からの水漏れが懸念されますし、同様に壁のシミによって外壁からの湿気の浸食が確認できます」(上出さん)

コンクリートが固まるには水分が必要で、95%固まるのに1年、99.9%固まるのに3年を要するといわれており、建築後もマンションの壁は、内部の水分を放出し続けているのだそう。そのため、壁の構造・仕様や間取りによっては理想的な風通しが確保できず、壁面からの湿気がカビの元となってしまうことがあるのです。このあたりは長年の経験に裏打ちされた、ベテランならではの査定術といえそうです。

ヒアリングするエージェント

また、チェックの合間には、Iさんからヒアリング。マンション内の事故や周辺環境など、目には見えないネガティブ要素が存在しないか確認をしていきます。

物件の検分は、小1時間で完了。もちろん、間取りや階層、環境、そして近隣の価格相場などは事前に押さえ済みだという上出さん。果たして、Iさん宅はいかほどの値段に見積もられたのか?

●不動産営業マンと不動産価格推定エンジン、両者が弾き出した査定額は!?

続いて、場所をソニー不動産のオフィスに移し、先ほどのIさん宅のデータを不動産価格推定エンジンに入力。住所や築年数、維持管理費など、用意されたフォームに沿って、順次数字を打ち込んでいきます。

「コンピューターによる価格推定の強みは、何といっても非常に膨大な不動産データを元にして計算モデルを構築している点です。これにより、例えば、おうちダイレクトにおいては、約9万7,550棟の推定が可能であり、室数に換算すればこの数十倍になる物件の査定を一度に行えるわけです。これは人力では到底処理できないデータ量といえるでしょう。」(情報技術担当執行役員・角田智弘さん)

圧倒的な情報量を元に、現在の適正価格を算出する不動産価格推定エンジン。何より、人力による現場チェックと比べれば、やはりパソコン一つでオペレートできるメリットは計り知れません。実際、入力に要した時間は、ほんの1分程度でした。

さて、両者の査定額を比べてみたところ――。

査定結果の発表

不動産営業マンが提示した金額は、5,950万円。これに対し、不動産価格推定エンジンが示したのは5,828万円という結果になりました。微妙な差はあるものの、これはおおよそ一致した見解と見ていいのではないでしょうか?

●新築時の売り出し価格と現在の乖離率から金額を算出

上出さんが5,950万円と算出した根拠について、詳しく聞いてみましょう。

「私はまず、同マンションのこの1年間の取引事例を抽出し、その成約価格を新築分譲時の価格と比較しました。新築価格との乖離率の平均値と、この1年間で価格がどう変動したのかを確認しながら直近の取引データと比較し、Iさん所有の物件と照らし合わせています。その上で、周辺環境の変化などを吟味し、この金額が適切と判断したわけです」(上出さん)

ただし、坪単価にこだわり過ぎると、その物件本来のポテンシャルから乖離してしまうので、注意が必要です。「たとえば眺望に難があったり、意外な騒音があったりというネガティブな要素や、その逆のポジティブな要素は、実際に現地を訪れなければわからないことがある」(同)からです。

不動産価格推定エンジンよりも、不動産営業マンのほうがやや高値をつけたのは、物件を実際に見て得た好感によるものでしょう。

●「不動産価格推定エンジン」の課題と上手な活用法とは

自宅の相場感を簡単に測ることができる不動産価格推定エンジンですが、活用にあたっては、その特性を十分に理解しておくことが必要です。

「不動産価格推定エンジンの現状の課題としては、データ化されているものからしか推定ができないため、物件ごとの細かな条件を反映しにくい点が挙げられます。たとえば、マンションの高層階であれば部屋ごとの眺望等条件の違いはあまり生じませんが、低層階では、建物の位置関係など周辺環境のちょっとした違いで眺望や日当たり、騒音などが大きく異なり、実際の価格も大きく変わってきます。こうした物件の個別性は、データ化されていないので、当然コンピューターとしても推定はできません。」(角田さん)

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実際、今回の物件とは別の低層階の、窓の前の高架に電車が走っていることが原因で眺望・騒音などの条件があまり良くない物件について査定を比較してみたところ、人力査定と大きく査定額が離れた場面もありました。

とはいえ、自宅のおおよその価格をチェックするということに関していえば、「おうちダイレクト」内で利用できる「不動産価格推定エンジン」を使うことは有効な手段の一つといえるでしょう。不動産の売却は、人生における一大事。自宅のおおよその価格を知る選択肢の一つとして、およそ1分程度で物件価格を算出できる「不動産価格推定エンジン」を参考にしてみてはいかがでしょうか。

※1ソニー不動産では、お客さまへサービスを提供する担当を「営業」ではなく「エージェント」と呼んでいますが、ここでは、一般的な呼称である「不動産営業マン」との用語を用いています。ソニー不動産のエージェント制についてはこちら

※2ディープラーニング技術とは、近年急速に発展しているAI(人が持つ学習能力をコンピューターで実現しようとする技術)の一つで、人間の脳の構造を模した計算モデルを用いる点に特徴があります。不動産価格推定エンジンの詳細についてはこちら

取材・執筆:友清 哲
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1974年、神奈川県出身。フリーライター&編集者。1999年よりフリーランスで活動。雑誌、Webで精力的にインタビュー、執筆を行う。『日本クラフトビール紀行』(イースト新書Q)『一度は行きたい「戦争遺跡」』(PHP文庫)など著作も多数。

編集協力:有限会社ノオト

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