離婚の際、大きなトラブルとなりやすいのがお金の問題。財産分与には不動産(結婚後に購入の場合)も含まれ、分割できないゆえに頭痛のタネになることもあるのだとか。
「離婚と不動産の問題では『感情』と『勘定』がキーワードになります。『勘定』、つまり損得で物事を判断してお金で解決できれば、まだ売却はスムーズに進むのですが、なかなかそうはいきません。特にどちらかの不倫が原因での離婚だと、『相手を困らせたい』という『感情』によって、事態がどんどんこじれてしまうのです」
こう話すのは、住宅ローン問題支援ネットの高橋愛子さん。さまざまな離婚と不動産のトラブルを扱ってきて、特に多いのが「片方が家を売却しようとしても、もう片方がそれに応じない」ケースだとか。そうした場合、売却を進めることはできるの......?
●お互いの主張が平行線の場合は、競売になることも
「基本的には、話し合いで折り合いをつけるしかありません。もし片方が売りたい、片方が住み続けたいとなって膠着状態になると、最悪の場合、売りたい側が住宅ローンを滞納して競売に持ち込むこともあります。こうなると、お互い大きな損害を被ります」(高橋さん 以下同)
具体的に、どのような損害があるのでしょう?
「競売になると、物件は市場価格より安値で売られることになるため、売却してもローンを返済できないケースがあります。残ったローンを払えないと、自己破産に陥ることも。また、競売にかけられると、単独名義ならその人が、連帯債務者や連帯保証人、ペアローンの場合は両方が金融機関のブラックリストに載ります。さらに、住み続けたいと思っていた方は法的に家から追い出されます。離婚をきっかけに破産してしまう人は、意外と少なくないのです」
つまり、不動産の売却は感情ではなく損得勘定で動いたほうが、双方のダメージが少ないのですね......。
「ただ、双方が売却に同意していたとしても、オーバーローン(注:ローン残高が不動産の時価を上回り、物件を売却してもローンを完済できない状態)になることが多々あります。そうなると、夫婦どちらかに借り換えをしたり、現在のローンの名義変更が難しかったりと、その後の生活にも支障が出ます」
●幸せなときの物件購入時こそ、ローンの組み方は慎重に
となると、家を買うときのローンの組み方が、離婚時の売却の明暗を分けるということでしょうか?
「そうです。でも、これから結婚、あるいは子どもが生まれるなんてタイミングで家を買うときに、離婚を想定するような人はいないですよね(苦笑)。ですから、できる解決策としては、オーバーローンやフルローンを組まないことです。離婚に限らず、将来どんなリスクがあるかはわかりませんから」
また、協議離婚で円満に進んだとしても、お金のやりとりは離婚時にきっぱりと清算するのがおすすめだそう。
「共有名義の場合、売却には2人の同意が必要です。離婚後も共有名義のままにしておくと、家を譲り受けたほうが数年後に売却しようとしても、相手と連絡がつかないこともあります。また、もし相手が別の人と家庭を築いて亡くなった場合、その家は相続の対象。そのため、元妻・元夫は住めなくなる可能性も発生します。離婚の際には単独名義にしておくこと。これも重要なポイントです」
離婚と家の売却については、さまざまな問題が複雑に絡み合うため、一筋縄ではなかなかいかないのが現実です。今まさに離婚問題で家を売却しようと考えている人は、まずはローンの残債を確認し、専門家にアドバイスを求めることが離婚破産を防ぐ手段になりそうです。
取材・執筆:南澤悠佳
有限会社ノオト所属の編集者、ライター。得意分野はマネー、経済。子育てや不動産、会計など、企業のオウンドメディアを中心に担当する。Twitter ID:@haruharuka__
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