「子どもが大きくなり手狭になったから」、「転勤でやむなく」など、さまざまな理由から起こる買い替え。今住んでいる家の売却と、新居の購入を一気にこなすとなると、何から始めたら良いか、何を優先すべきか、分からないことも多く正直ちょっと手間だと感じますよね。
そこで、ソニー不動産の売却コンサルティング事業部・村田洋一さんと、同社購入・リフォーム事業部・笠原政和さんに、スムーズな買い替えの手順を聞きました。
●買い替えの王道「売ってから買う」のメリットは?
「今の住まいを売却後、新居を購入する」が一般的だという現代。多くのケースがこの流れなのだとか。
「家をお持ちの方の大半はローンを組んでいますが、返済の途中で買い替えをするとなると、ほとんどの場合銀行側から『今のローンを完済してからでないと、新たにローンは組めない』という条件を出されます。こういった金銭的な制約をなくすためにも、売却を先に進め、ローン完済に目途を立てた上で、新居を探すほうが得策といえます」(村田さん)
それに、「今の家が売れたら購入したい」という宙ぶらりんの状態だと、購入予定先の売り主さまからは「売れない可能性も高いはずだ」「その物件は果たして希望の価格で売れるのか」と不安に思い、交渉がスムーズに進まないこともあるのだとか。「売ってから買う」という流れは、自分だけでなく購入予定先の売り主も安心といえるようです。
「また、売却先行だとタイミングを見て売りに出せるので、満足のいく価格で売れることが多いですね。金銭的に余裕がある場合は、どちらが先でもスムーズに進められますが、やはり『売ってから買う』がいいのかもしれません。ただし、売却した場合、退去しなければいけないので、新居を見つけるまでの間"仮住まい"になるケースも。その分コストも手間もかかることを覚えておきましょう」(笠原さん)
とはいえ、「仮住まいのコスト(敷金礼金、家賃、引っ越し費用など)は、タイミングを見計らって売却すればペイできる可能性も十分あります」と村田さん。そう考えると、「売ってから買う」という流れに特別大きなデメリットはないといえそうです。
●不動産売買で大切な計画の立て方!
「売ってから買う」の大まかな流れは以下の通りです。
■売却
不動産会社に売却を相談
↓
査定してもらい売りに出す
↓
内見を経て買い主さま決定
↓
買い主さまのローン審査
↓
売買契約の締結
↓
自分のローン完済手続
↓
必要であれば仮住まいに引っ越す
↓
引き渡し
■購入
不動産会社で部屋探し
↓
内見を経て希望の物件決定
↓
購入申し込み
↓
ローンの事前審査
↓
売買契約の締結
↓
ローン本申し込み
↓
銀行とのローン契約(金銭消費貸借契約)
↓
引き渡し
「ローンの審査など日数のかかる工程があるので、最短でも1~2カ月くらいはかかると思います。ここに相手方の都合も加わるため、負担はかなり大きいはず。だからこそ、2つの工程を一度に進めるのは至難の業なのです。ただし、ご年収の高い方や自己資金が豊富にある方は購入を先行し同時に行うこともできます。そこの判断は不動産会社の担当者にまずはご相談いただきたいです」(笠原さん)
「そういう意味でも、やはり仮住まいはおすすめですね。さきほども言ったように、仮住まいの費用については、ご自宅が高く売却できれば、高く売れた分を仮住まいの費用に充てることができます。なにより腰を落ち着けてゆっくり探せるので理想の物件に巡り会える可能性が高い。なかには仮住まいの賃貸契約期間、丸々2年間かけてじっくり探す人もいますよ。」(村田さん)
ちなみに、少しでも負担を減らすため、売却も購入も同じ不動産会社の担当者にお願いするのはどうだろう? と思ったのですが......村田さんも笠原さんも「担当者にも"得意分野"があるので、どちらかに特化させるのが一番」とのこと。そのほうが、好条件で進められるそうです。
とはいえ、素人には得意分野を見極められないので、希望の不動産会社に「購入が得意な方をお願いします」などと伝えて、担当してもらいましょう。
●売却と購入、ともに大切なのは○○計画!
理想的な進め方がわかったところで、売却・購入の過程で注意すべき点を聞いてみました。
「売却でまず注意したいのは、査定です。不動産会社が算出した価格が買い替え時のベース価格となりますが、できれば机上査定(簡易査定)ではなく、訪問査定を依頼した方が良いです。これは、机上査定は文字通り机上で算出した価格であり、眺望や部屋の状態などを加味しておらず、実際の売却価格と異なってくるケースもあるからです。一方、訪問査定であれば、不動産会社がお部屋の状態などを実際に目で見ることができますので、より具体的・現実的な価格をご提示することが可能です。ローンの完済を含めた買い替えの目途をつけるためには、査定価格はより具体的・現実的な価格を知っておいたほうが良いです」(村田さん)
売却においてもう一つ重要なのが、引き渡しのタイミングです。
「仮住まいをする場合、基本的には、自宅の引き渡し前までに仮住まい先の家に引っ越さなければなりませんので、探す時間も考えますと、ある程度の期間を設ける必要があります。ただ、この期間は買い主さまの希望や仮住まい先の状況などにもよりますので、あらゆる事情を考慮した上で、不動産会社より最適な引き渡し期間のご提案してもらいましょう。あまりにも期間が短すぎると、期日までに引っ越しを済ませることができず、自宅の引き渡しに猶予をもらわざるを得なくなります。すでに所有権が買い主さまに移転している場合、買い主さまにとっては、気分の良いものではないですし、これによってトラブルになってしまうかもしれませんので、引き渡し期間は余裕を持って設定する必要があります」(村田さん)
次に、購入時に注意したい点とは?
「購入時も、資金計画は大事。どれくらいローンが組めるのか、頭金はいくら支払えるのかなど、お金まわりのことはできるだけ把握しておきましょう。転職をして勤続年数が短い場合、以前よりもローンが組みづらくなる可能性もあるので、『前は○千万円でローンが組めたから今回もいけるでしょう』と軽く見積もらないようにしてくださいね」(笠原さん)
ちなみに、「売却と購入に共通していえますが、不動産会社から年収や年齢、ローンの有無など聞かれたときは素直に教えてほしいです。その内容によって、提案する物件なども変わってきますから」と笠原さん。
いつかくるかもしれない買い替えに備え、この知識を頭に入れておくと、心強そうですね。
取材・執筆:松本まゆげ
フリーライター。編集プロダクションを経てフリーランスに。現在は女性アイドルやアニメの記事を中心に執筆する。2015年にマンションを購入し、マンションの売却などに興味をもつ。
記事編集:有限会社ノオト