不動産売却時によく耳にする言葉の一つが「REINS」(以下レインズ)。これは「Real Estate Information Network System」(不動産流通標準情報システム)の略称で、日本全国の不動産情報を共有し、売主と買主のスムーズかつスピーディーな取引をサポートするシステムです。レインズが不動産売却を進める上で果たす役割とは? 不動産業界に詳しい平野雅之さんに聞きました。
●1990年に不動産業界が足並みをそろえてスタート
現在、全国の不動産会社が加入しているというレインズ。ホストコンピューターが一元的に物件情報を管理しており、不動産会社は自社が契約している物件情報にとどまらず、加入している不動産会社間で情報を共有できるようになっています。東日本、中部、近畿、西日本という4つのエリアで、国交省の指定を受けた各不動産流通機構が連携して運営しています。
「レインズがスタートしたのは1990年ですから、もう30年近くになります。それ以前は、不動産の情報は紙媒体を介してやりとりされていました。街の不動産会社の入り口や窓に貼ってある図面がありますよね。あの図面は指定した地域に紙で配布されるシステムで、たとえば東京都心と城南地区といったエリアを個別に指定することしかできません。だから、都心の不動産会社には広範囲の図面が届く一方、 別のエリアでは特定地域の図面しか届かないということもあり得ました。
物件を売却しようと思っても、情報を広く届けることはなかなか難しかったんです。それがレインズによって、東日本なら青森から関東甲信越まですべての不動産業者が情報をチェックできるようになりました。情報の拡散性については以前の比ではありません」(平野さん 以下同)
※REINS TOWERのスクリーンショットです。
●幅広いエリアの不動産情報をあまねく共有できる
物件の情報を広く届けられるので、売主にとっては買い手が見つかる可能性が格段に高まります。たとえば東日本レインズは、売主・買主のメリットとして「希望条件に沿った購入相手のスピーディーな発見」「取引事例に基づく適正な市場価格の設定」「(不動産会社による)きめ細やかなサービスの提供」を挙げています。
ただし、レインズは不動産会社が物件を登録し、閲覧するもの。そのため、基本的には売主や買主が直接情報を閲覧できるわけではありません。不動産売買においては、どのような点に注意して活用していくべきでしょうか。
「不動産会社との契約が専属専任媒介、専任媒介であれば、レインズに売却物件の情報を登録する義務があります。不動産会社は、レインズへの登録証明書を売主に渡さなければいけません。しかし、その後に物件情報を削除したり、他社に現地案内をさせなかったりで囲い込むという悪例が見られました」
それに対して、何か対策はあるのでしょうか?
「こうした事例を受け、2016年からは売主が自身の物件の登録情報だけは登録内容、取引状況を確認できるようになりました。『ステータス管理』という仕組みです。自身の物件がレインズにどのように登録されているのかや、 申込みの状況などを閲覧できます。不動産会社がどういう形で情報のやり取りをしているか、売主の方もこの仕組みはぜひ知っておくべきでしょう」
前述の通り、レインズへの登録が義務付けられているのは専属専任媒介、または専任媒介契約のみ。一般媒介契約の場合はレインズの登録が義務づけられておらず、登録されない可能性もあります。レインズの利便性を享受できるのは、きちんとしたネットワークの活用があってこそ。自分の物件がどのように登録、取引されているのか? 売却をスムーズかつスピーディーに進めたいのであれば、「ステータス管理」を活用してみるのもおすすめです。
取材・文:佐々木正孝
ライター/編集者。有限会社キッズファクトリー代表。情報誌、ムック、Webを中心として、フード、トレンド、IT、ガジェットに関する記事を執筆している。
編集協力:有限会社ノオト