投資において重要なのは、利益を確保することはもちろん、損失を最小限に抑えるリスク回避の意識を持つこと。不動産の場合、損失の拡大を防ぐためには適切な売り時を見逃さないことがひとつのポイントとなります。
では、不動産を売却するタイミングを見計らう際、何に気を付ければ良いのでしょうか? 不動産鑑定士の浅井佐知子さんにお話をお聞きしました。
不動産は株や為替から少し遅れて値を落とす可能性がある!?
「まず大前提として、それが住居として所有する物件なのか、それとも投資用の物件なのかによって、事情はまったく異なります。住居として使用している場合、ローンの支払いに問題がないのであれば、売却によって損益が確定するという考え方は当てはまらないでしょう。それぞれの人生設計に基づいて、売る時期を判断すべきです。投資物件の場合は、極端に価格が下がる前に売り抜けるために、株価や為替の動きに注目しておきたいですね」
不動産投資の注意点について、浅井さんは「売りたいと思った時にすぐ売れるとは限らないこと」といいます。その場で売買が成立する株とはスピード感が異なり、一歩遅れて市況の変化が反映される傾向があるのだそう。
「株、為替、不動産というのは、連動した動きをすることが多いもの。株が下落し、円高の傾向が見え始めた後には、少し遅れて不動産が下落する可能性が高くなっています。実際、リーマンショックの時にも、株や為替から半年ほど遅れて、不動産は大きく値を下げました」
不動産は高額であるため価格変動により損失見込額が大きくなる可能性がある一方、賃料収入が発生し続ける為、適切な時期に素早く売却に踏み切れる人が少ないのも特徴。株や為替の動きに異変を察した場合、すぐに動けば売り抜けられる可能性は決して低くないそうです。
売値を見直すタイミングは「3カ月」スパン
不動産の売却においては、買い手の意向と折り合った適正な売値がつけられるかどうかも大きなポイント。もし、売りたくてもなかなか売れない状況が続くのであれば、粘りすぎず欲張りすぎず、価格の値下げを検討する必要があるでしょう。
それでも、できるかぎり高く売りたいのが売り手の本音。そこで気になるのが、売値を見直すタイミングの見極め方です。
「目安は売りに出してから3カ月。これは売り手と買い手を仲介する仲介業者との媒介契約の期限となる期間でもありますが、3カ月経っても売れないのであれば、本来の相場とずれている可能性もあります」
相場に合わない価格のまま粘り続け、売り時を逃してしまえば損失。3カ月を一つの目処に、市場を直視した現実的な判断も時に必要かもしれません。
取材・執筆:友清 哲
1974年、神奈川県出身。フリーライター&編集者。
編集協力:有限会社ノオト