不動産売却のトラブルを防ぐ「瑕疵担保責任」を詳しく解説!

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不動産売買は高額な取引になるだけに、売り手も買い手も慎重にならざるを得ません。売買において、売主側がチェックしておくべきなのが「瑕疵担保責任」。物件を引き渡した後に見つかった欠陥は一体誰が責任を持つのでしょうか? トラブルを未然に防ぐためにも、ぜひ覚えておく必要があります。不動産取引におけるさまざまな事例に詳しいソニー不動産の田中章一さんに「瑕疵担保責任」を巡る注意点を教えてもらいました。

※マンションAIレポート内では取材当時の情報で掲載しております。

●買主が知らなかった「瑕疵」の責任は売主にある

取引される金額が大きい不動産売買では、売主の責任も大きなものになります。瑕疵担保責任はその一つで、物件に隠れた瑕疵があった場合、買主は売主に対して損害賠償請求、契約の解除などができます。

そもそも瑕疵とは「キズ、欠陥」のことをいい、通常有すべき「品質」や「性能」を欠くことをいいます。不動産売買において住宅では雨漏りやシロアリの被害、排水管のトラブルなどが該当します(ただし、経年変化による劣化や腐食そのものは「瑕疵」には当たりません)。民法では、これらの瑕疵に関する売主の責任を瑕疵担保責任と呼びます。注意したいのは、この責任が「買主が瑕疵を把握していた場合は適用されない」ということです。売主はどのような点に注意すべきなのでしょうか。

「瑕疵担保責任で問題になるのは、売主が知っていたにもかかわらず買主に伝えていなかった瑕疵です。買った後で雨漏れを発見したとしても、売買契約時に雨漏れしていることを告知していたら、それは売主の瑕疵担保責任ではありません。ただ、不動産の売買では買主の保護に重きが置かれますので、売主自身も把握していなかった雨漏れがあった場合でも、これは売主の瑕疵担保責任になります。一方、雨漏りがあることを告げていなかった場合は『事実の不告知』として重大な問題に。もちろん、その場合の責任は売主が負うことになります。不具合や欠陥を告げると不動産の売却に不利になると考えがちですが、正直にすべて買主に告げておくことが結局大きな損害を防ぐことにつながります」(田中さん 以下同)

具体的に、瑕疵担保責任はどのように問われるのでしょうか?

「中古物件の場合、瑕疵を発見してから1年以内ならば買主は売主に対して損害賠償ができますし、瑕疵のために契約の目的が達成できない場合は契約そのものを解除することも可能です。しかし、売主は自身が把握していない瑕疵によって何年も買主から瑕疵担保責任の追及をされるとなれば、不動産の売買そのものが成立しにくくなります。そこで、売買契約の中で売主の瑕疵担保責任を免除したり買主の責任追及できる期間を短縮したりしていますので、不動産売買契約締結前に不動産会社に確認しておきましょう」

家の中をチェックする男女

●プロが診断するホームインスペクションも視野に入れて

近年、中古物件の売買では建物診断、ホームインスペクション(建物状況調査)を行うケースもあります。プロが診断することで隠れた瑕疵を洗い出したり、将来的に発生するであろう修繕の見積もりをしたり、というのが狙いです。

「たしかにホームインスペクションもトラブルを防ぐ一つの選択肢ですが、必須というわけではなく、あくまでケースバイケースで考えましょう。瑕疵は雨漏り、シロアリ、そして給排水設備の故障、備え付けの設備の故障がほとんど。たとえば、マンションの場合外壁からの雨漏りはほとんどのケースで共用部が原因となり管理組合の責任負担、給排水管の故障も個所によっては管理組合の責任負担になる共用部に指定されていたりします。水まわりや設備のトラブルで下階へ漏水した場合も住宅総合火災保険等に加入しておけばそう高額な負担にはなりません。特に築年数が比較的新しいものであればほとんど心配ないでしょう。過去にどういう欠陥があったかを売主さまと買主さまがきちんとコミュニケーションを取れば、大半のケースで双方納得のいく取引になります。『大事に使ってきたので、ぜひ大事に使ってくださいね』といった言葉を交わしてお取引をいただきたいと思います」

一方、木部の腐食やシロアリといったトラブルの種をはらむ戸建ては別。診断を適切に行って売主に引き渡しましょう、と田中さんは提言します。

「戸建の場合、構造や躯体など目に見えない部分で瑕疵が発生している可能性は否定できません。ホームインスペクションは行うべきでしょう。ただ、10万円なりの診断費用がかかったとしても、安心・安全な取引を行うことで、10万円以上高く売ることも考えられます。このような戦略を考えるのがエージェントの役割でもあります」

隠れた瑕疵を巡るトラブルが非常に多いことから、政府も中古住宅診断の活用を後押しする動きが活発です。売主は必要に応じてホームインスペクションを行い、物件の瑕疵について丁寧に把握。売買契約では買主に情報を提供しつつ、瑕疵担保責任について話し合っておくべきでしょう。後々のトラブルに発展しないよう、「売主としての責任」をしっかりと理解しておきたいものです。

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取材・執筆:佐々木正孝
ライター/編集者。有限会社キッズファクトリー代表。情報誌、ムック、Webを中心として、フード、トレンド、IT、ガジェットに関する記事を執筆している。

編集協力:有限会社ノオト

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取材協力

写真:田中章一
田中章一

リノベーション&リセール推進室。不動産デベロッパー、不動産仲介会社、金融機関を経て2015年にソニー不動産に入社。マンション、戸建ての売買取引をはじめ不動産投資、住宅ローンの全般に精通している。

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